Beyond Magazine Logo
instagramxtiktokline
Newspaper

ビヨンドマガジンでは
ニュースレターを配信しています

【イベントレポ】映画と香りの融合! 新感覚の体験型上映イベント「Eau de Cinéma」

2025/06/09

学生主体の映画レーベル・Label Bettyが主催する、映画と香りを組み合わせた体験型上映イベント「Eau de Cinéma(オー・ドゥ・シネマ)」が、5月25日(日)にTheater GUILD(東京・代官山)で開催された。

岡田詩歌が監督を務めた短編映画『ワンダフル千鳥足 in wonderland』(2019年)と『Journey to the 母性の目覚め』(2021年)の上映と、調香師・麻乃によるオリジナルフレグランスの調香が行われた同イベント。香りと映画が交差する、今までにないシネマ体験となった当日の様子をレポートする。

左手からLabel Betty代表の埜邑明日加、映画監督の岡田詩歌、調香師の麻乃、トークでファシリテーターを務めた安泰河

1人ひとりにヘッドフォンが手渡されて始まった「Eau de Cinéma」。会場には、同イベントを主催するLabel Betty代表の埜邑明日加、上映作品の監督を務めた岡田詩歌、香りを手がけた調香師の麻乃の姿もあった。

司会の「作品から連想される香りをイメージしながら鑑賞してみてください」という言葉で、いつもと違う気分で2本の映画を鑑賞することに。最初に上映されたのは、酩酊しながら東京を徘徊する主人公が印象的な『ワンダフル千鳥足 in wonderland』だ。

『ワンダフル千鳥足 in wonderland』(2019年)

本作は、落語の技法「道中付け」のリズムに乗って、失恋した女子大生がお酒と街に飲み込まれていく様子をポップに描いたセルフドキュメンタリー。約2分間という短い時間の中で次第に速くなっていくテンポに、観ているこちらも酔いが深まっていくような感覚に。いつの間にか自分も女子大生の“わたし”になって、東京を徘徊している気分になっていた。

次に上映されたのは、リアリティさとコミカルさが混じり合う『Journey to the 母性の目覚め』だ。

『Journey to the 母性の目覚め』(2021年)

この作品は、通学途中で突然「母性」に目覚めた女子中学生が、思考の旅を駆け巡っていく5分間のショートストーリーとなっている。結婚や妊娠、子育てなど、センシティブなテーマに疑問を抱き、葛藤する主人公の姿が、鮮やかにコミカルに描かれ、気がつくと紆余曲折する彼女の思考の中に迷い込んでしまった。

映画鑑賞後、『Journey to the 母性の目覚め』からインスピレーションを受け、調香師の麻乃が岡田監督と話し合いながら何度も試作を重ねたというオリジナルフレグランスが配布された。

このフレグランスは、「母性」への葛藤や疑問を追体験できるよう調香されており、トップノート・ミドルノート・ラストノートと変化していく香りで、作中の少女の気持ちの移ろいが表現されている。

メインの香りには、苦味とスパイシーな香りが特徴のハーブ・フェンネルを使用。西洋では「母性」の象徴ともされているこの香りに、ほのかなローズの香りが重なり、優しく包み込んでくれるような柔らかさを生み出している。その香りからは、映画のテーマである「母性」を感じられた。

イベントの最後には、オリジナルフレグランスに観客それぞれが名前をつけるワークショップが実施された。「葛藤」「Winter」「Hug」など、独自のネーミングを楽しむ参加者たち。映画のワンシーンを思い出したり、香りからの連想を広げたり、香りを起点に映画の解像度がぐっと上がっていくような感覚を堪能した。

映像と香りの記憶を何度も行き来することで、これまで感じたことのない映画体験を楽しめた「Eau de Cinéma」。イベントで配られたフレグランスを香るたびに、この日の上映体験のことを思い出すだろう。

新たな映画体験によって、若手のクリエイターが注目される場の創造を目指すLabel Betty。今後もどんな新しい試みをしてくれるか楽しみだ!